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日常の中で私たちは常に影に囲まれて生活しています。そして多くの場合、私たちは無意識にこの影とインタラクション(相互作用)を起こしています。知らず知らずに感じている影の形や色という問題もその一つです。光によって様々に変化する影の形や色から、私たちは自身を取り巻く環境の情報を視覚環境として感じ取っています。そしてその時、私たちの中では効率的に視覚情報を処理するために気づかないうちに様々な知覚・認知作用が起こっています。
見えているのに見ていない、見たいと思わないと見えてこない、このような光と影そしてその狭間にある色彩に関わる問題は常に表現のテーマとして扱われてきました。影の中の色彩をキャンバスに定着し光を表そうとした印象派の試みは代表的なものです。そして今日、科学技術の進歩により光や影、色彩を表現するメディアは物質的な「もの」から電子制御される光の様な現象的な「こと」まで広がりを見せています。これに伴い、光によって引き起こされる影と色彩のイメージは多様化し新たな表現の可能性が広がってきています。
そこで私は、私たちが普段何気なく体験している光と影というインタラクションをデジタルメディアにより拡張し新たな色彩体験として提示しています。「COLORS in SHADOWS * SHADOWS in COLORS」というタイトルのこの試みは多光源プロジェクションによるカラーインスタレーションです。鑑賞者は天井から投影される光の中に入り自身の体を動かすことによって自身の影とのインタラクションを楽しみます。そして楽しみながら床面に落ちる分断された自身の影や影の中の色彩により、日常とは異なる光・影・色彩といった自身を取り巻く視覚環境や色彩知覚を再体験します。
通常私たち自身の影は私たちの姿に応じた形で地面に映っています。当然、私たちが体を動かせばそれに伴って影もその形を変えます。自身の影の形とのインタラクションは日常何処にでも起こり、あまり意識することはありません。しかし私たちは気づかないうちにこのインタラクションから光源の方向や光の拡散具合、強さなど様々な情報を感じ取っています。このような影の形とのインタラクションが日常と異なる形で起こったらどうなるでしょうか?
今回の試みでは影の形とのインタラクションをデジタルメディアを用い拡張し非日常的なインタラクションへと変容させています。これを実現するために天井に複数台設置されたビデオプロジェクターを用い、投影されるビジュアルイメージを制御しています。制御された複数のビジュアルイメージの形態はパズルの様に重なり合うことで互いを補完し、白色に見えるように構成されています。そしてこのようなビジュアルイメージ投影環境に光を遮る要素として鑑賞者が入ると鑑賞者の影が分断され床面に現れます。これによって鑑賞者は日常とは異なる分断された影とのインタラクション経験し、光と影という視覚環境や自身の光に対する知覚・認知を再体験します。
通常私たちは見るという行為によって視覚環境の中から自身に必要な視覚情報を取捨選択しています。例えば一見、黒く見える影の中に何かを見つけようとして影の中をじっと見つめていれば黒い影の中にも様々な色彩が見えてきます。このような色彩の見えの変化は私たちがより効率的に視覚環境から情報を得るために働く色彩知覚の恒常性によって起こります。
この試みでは色彩知覚の恒常性を非日常的な影の色とのインタラクションとしてデジタルメディアにより拡張しています。これを実現するために天井に複数台設置されたビデオプロジェクターから投影されるビジュアルイメージの色彩を独自アルゴリズムを用いて明度・色相・彩度の心理量軸により制御しています。複数のビジュアルイメージは重なり合う様に投影されることで赤と緑、紫と黄といった補色の2色を混色する状態になり投影されるイメージは無彩色に近づきます。そのため無彩色に近づいたビジュアルイメージ投影環境に鑑賞者が入ると光が遮られ影の中に鮮やかな色彩が現れます。これにより鑑賞者は影が重なるほど色が鮮やかに見えるといった、影の色とのインタラクションを経験し自身の色彩知覚を再体験します。
この試みでは鑑賞者が容易に非日常的な自身の影とのインタラクションを体験できるようにするため、天井に8台のビデオプロジェクター設置して多光源ビジュアルイメージ投影を行っています。それぞれのビデオプロジェクターはコンピュータ制御され異なるビジュアルイメージを床面に投影し、それらが重なることで床面に特殊なビジュアルイメージ投影環境を構成します。これにより鑑賞者は床面に設置された円形の白いスクリーンの中に入ることでビジュアルイメージ投影環境に干渉し多方向に落ちる自身の影とのインタラクションを体験できます。
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